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 とある休日の昼下がり、
置きぬけのぼんやりした頭にけたたましい騒ぎ声が飛び込んできた。

徐々に意識がハッキリしてくるにつれて、
すぐにそれが隣接した建物の住人のものだと分かる。

少しだけ窓を開けようとしたのだけれど、
長いこと動かしていないせいか
真夏に放置したグミみたいにレールにぺったりくっついていて、
思ったより力が要る。

肩越しに構えた手のひらでえいっと押すと、
ミリ単位で開けるつもりが勢い余って十数センチくらい開いてしまった。
容赦なく差し込んできた外の光が暗闇に慣れた網膜を焦がし、
続いて晩秋のひんやりとした風が、
ドロドロに固まっていた部屋の空気をかき混ぜる。

僕の部屋から相手方の窓までは僅か1mほどの距離もなく
幸いにも向こうは格子状に重ねられた網入りの板ガラスだったため
こちらの姿が見られることはない。
同時に向こうの様子を直接見ることもできないが。

「この洗濯機いいじゃん、いくらしたの?」

低く、それでいて重苦しさのない、
テンポの安定した声が一際大きく響く。

ほんの少しだが、その声は旧き友人の一人によく似ていた。
もちろん、本人がこんなところに居るわけはないのだけれど。

会話の内容から察するに、
久々に会う仲の良い友人が家を訪ねてきたといったところだろう。

コトリと何かを取り出す音、それから石鹸の甘い香り。

胸の奥がトクンと微かに震える。

僕は静寂を尊ぶ。人の声も足音も息遣いさえも好きじゃない。
けれども、意味のある情報として受け取ることができれば、
それは心の深いところに出来た隙間をほんの少し埋めてくれたりもする。

ああ、そういえば僕は昔からこういうところがあったかもしれない。

とりわけ学校の帰りが遅くなった時なんか、
街灯の下に背を預け、民家から漏れる明かりをぼんやりと眺めては
見知らぬ誰かの談笑する声に聞き入っていた。

決して自分自身が満たされていなかったってわけじゃない、と思う。
少なくともあの頃は。

ただ、何とも形容しがたいのだけれど、
例えるなら水面に浮かぶロウソクの灯のようなキラキラしていて暖かい、
『ここではないどこか』が確かにそこにあるような気がして。

自分が関わること以外には
呆れるくらいプラス思考なのに、ね。
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無題
乱視の自分には光が拡散し世界が輝いて見える。
瞳に映る世界とは裏腹に、自身の現実はより暗く汚く感じる。
...何時になったらこの目に映る"現実"へ辿り着くんかねぇ
NONAME 2010/11/14(Sun)16:25:43 編集
無題
汝如何なる現実を望もうか
NONAME 2010/11/14(Sun)17:17:42 編集
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