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 第二次魔導戦争・・・それは読んで字のごとく
魔導師の魔導師による魔導師のための戦争なのだ。
そして第二次だから当然第一次があったわけで、
しかもそれは当然第一次の頃より技術も規模も進歩しており、
初等部の教科書に写真付きで載るような
魔法界の歴史に残る大事件なのだ。

少なくとも僕はそのつもりであったし、
利害関係という太くて脆い糸で結ばれた仲間たちも
それに見合うだけの決意と覚悟を胸に秘めて
この騒動を起こしたに違いない。そうであるべきだ。

たとえそれが蜂起から数時間ほどで
魔導師ですらないたった数人の民間人によって鎮圧され、
『暗闇の街角事件』などといういかにも地方の三流ゴシップ誌が
ページ合わせのために取り上げそうな
都市伝説めいた呼称で呼ばれることになろうとも。

そしてたった今、
その第二次魔導戦争もとい暗闇の街角事件の首謀者である僕は
敵対勢力の手によってキャンピングカーの後部スペースに拘束されていた。

後部スペースは四畳一間ほどあり、
中央の机を囲うようにして備え付けの形で座席が配置されている。
夜間だというのに照明はついておらず、
視認できるのは僕が座っている場所から机を挟んで反対側に三人ほど。
いずれも先ほど僕らと一戦交えた民間人だった。

仲間の魔導師達がどこに拘束されているか、
はたまたとっくに政府に引き渡されているかは知る由もないが、
このザマではいずれにせよ一斉蜂起は失敗に終わったことだろう。

僕はそんな彼らを相手に熱弁を奮っていた。
半ばヤケクソで。

「魔法界は腑抜けている。このままでは技術革新の煽りを受け、
やがては魔法そのものが歴史の波に飲まれ衰退するだけだ。
まずは大規模な二極化、それをもとにした階級制度が必要なのさ」

そう、全ては魔法界のため。
僕は歴史の代弁者として魔導戦争という形で引き金を引いただけにすぎない。

金で動く人間には金を、名声で動く人間には名声を餌に
ゆっくりとだが着実に賛同者を集め、
いずれは大陸全土を巻き込む壮大な計画の足がかりとして役所を占拠、
政府との交渉を有利に進める予定だったのだが。

綿密な計画の上で実行に踏み切ったはずが、結果は見ての通りだ。
闇に乗じて奴らが侵入してきたと報せを受けた頃には、
僕の首元には既にナイフが突きつけられていた。

連中がいかにして結界を破り、探知もされることなく
これだけ大勢の魔導師の監視の目を掻い潜って来れたかはわからないが、
聞けば魔導師でも軍人でも警察機関でもない、
ただの学生だというではないか。

そしてこの何の力も持たないはずの素人は、
僕が、いや僕らが何年もかけて積み上げてきた大儀を
あっさりと切り捨てるようにこう言い放った。

「くだらねー・・・お前は最底辺の魔導師だよ」

なんと、言うに事欠いてこの男、
仮にもアカデミー首席であるこの僕に対して
最底辺とはまったく聞き捨てならない。嫌がらせか?
勝てば官軍とでも言うつもりか?
敗者に人権はないのか?

「へえ、君に何が分かるって?」

頭に上りかけた血を無理矢理押し下げ平静を装うのに必死で、
紡ぎ出した言葉は悲しいほどに陳腐なものだった。
これじゃまるで負け惜しみじゃないか。

こんな奴に分かってもらえなくたっていい。
魔導師でもない奴に僕らの世界の話が通じるとは思ってないし、
そもそも臆面もなく他人を罵倒するような奴に
僕らの問題に触れて欲しくない。
バカっていうやつがバカなんですよ。バーカバーカ。

エンジン音が止まる。
目的地に到着したのか、あるいはコンビニにでも寄って休憩するつもりなのか。
唐突に音と震動が途切れたことで静寂が余計に際立ち、嫌でも緊張感が高まる。
そういえば目の前の連中の他に運転手も居るんだっけ・・・。

「分かるさ、お前がやってることはただの犯罪なんだよ。
秩序を無視して自分勝手な思い込みで力を振り回してるだけだ」

もはやただの雑音だった。
耳元を飛び回る蟲の羽音のように、不快感を催すだけの言葉。
犯罪や秩序なんて最初からどうでもいい。
自分勝手なのもとうに理解した上でやってることだ。
っていうか、民間人のくせして危険区域に乗り込んだ挙句、
中の人間を片っ端からぶっ飛ばして首謀者を車で連れ去るってのは
果たして秩序正しい行動なんだろうか。

こちらから何を言っても無駄だし、
元よりこちらも聞く耳を持たないはずだった。

しかし、次に放たれた一言には否が応にも反応させられることになる。

「それでお前が助けようとしてる相手が喜ぶとでも思ってんのか?」

「トシ君は関係ない!」

思わず声を荒らげてしまった。
それにしても、何故こいつが彼のことを知っている?

これは第二次魔導戦争。
魔法界に新たなる秩序と力をもたらす
魔導師の魔導師による魔導師のための戦争なのだ。
たまたまその先に僕の本当の目的があるだけで、
たとえ本質的には同志を欺くことになっても何ら支障はない。

まあ実のところ、大儀なんて大仰なもの背負って前に進めるほど
僕は大物ってわけじゃない。

まあどっちにせよ終わってるよね、この状況。
こいつらが善人なら僕の身柄を警察や政府に引き渡すだろうし、
悪党なら組織との取引にでも使うだろう。
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Comment
無題
魔導士がマグルに拘束される日が来ようとは・・・
Hiro 2010/11/14(Sun)09:22:44 編集
無題
と・・トシ君?
NONAME 2010/11/14(Sun)16:32:18 編集
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